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【映画の話】線は、僕を描く【ネタバレあり】

今回の映画はこちら!!

【線は、僕を描く】

 

 

出演:横浜流星、清原果耶、細田佳央太、河合優実、矢島健一、夙川アトム、井上想良

富田靖子、江口洋介、三浦友和ほか

 

 

以下ネタバレあり

 

【ざっくりストーリー】

大事なものを失った青年が水墨画と出会い生き直す話

 

 

【感想】

 

「僕は、線を描く」ではなく「線は、僕を描く」

水墨画の線は絵師の経験技術はもちろん、その人の人間性や人生そのものを表すのだそうで、

自分が描いた線が自分自身を表しているとのこと。

 

大学生の霜介は、イベント設営のアルバイトで水墨画と出会い

水墨画の巨匠湖山にスカウトされることに。

 

家族を災害で失い、時間を止めて塞ぎ込んで空っぽの人生を歩んでいた霜介が、

水墨画やそれに関わる人たちと出会うことにより少しずつ変わっていきます。

 

ひたすら墨を擦り続けたり、部屋いっぱいに紙を並べて練習をしていたことから、

もともと霜介は真面目で一生懸命な人なのでしょう。

湖山が霜介をスカウトした理由は後半になって分かりますが、

そういった人柄も理由のひとつなのかもしれません。

 

夢中になって描いていた初期の頃から上達したのにスランプになったとき

「悪くない、でもこれは君の線じゃない。お手本にとても忠実だ」と指摘されます。

模写が上手になっても、自分の線で描けなければ意味がありません。

これではただの「僕は線を描く」状態です。

 

自分と向き合い、目の前にある命と向き合い、

内面を磨くことで辛い過去と向き合い、自分で止めていた時間を進める。

止まっていた時間が動きだしたわけではなく、霜介自身が止めていた時間を動かした。

ようやく「線は僕を描く」状態になれたのだと思います。

 

そんな霜介の成長を、全編に亘って美しい画で描いています。

ダイナミックな鷹や龍、繊細で鮮やかな椿とバラ、初心者の初々しい四君子。

特に、かつて霜介が住んでいた家の跡地に落ちていた椿の花。

霜介が帰ってくるのを待っていたと、朝日の中で希望を取り戻すシーンが美しく光に満ちています。

 

また、周りの人たちは厳しくも優しい人ばかりです。

 

何も聞かない優しさと悲しみを聞いてくれる優しさ

そっと見守る優しさ

発破をかけてくれる優しさ

未熟な点を酷評してくれる優しさ

立場が違う人たちがそれぞれの立場でジャンルの違う優しさをくれる、優しい映画です。

 

ジャンル:ヒューマン、青春

公開: 2022年

監督:小泉徳宏

脚本:片岡翔、小泉徳宏